性感染症というと、「一般にはあまり縁がない」あるいは「過去の病気」というイメージがあります。
 
しかし現代の日本でも性感染症の拡大はしばしば指摘されており、「自分には関係ない病気」と安心するのは危険ではないでしょうか。

性感染症の基本情報をまとめてみました。

オーラルセックスで感染する性感染症

いまはオーラルセックスも一般的になり、オーラルセックスにより性感染症にかかるケースが増えています。
 
性器クラジミアなどが咽頭に感染するのです。
 
オーラルセックスにより感染する性感染症には
・性器クラミジア
・淋菌
・梅毒
・口唇ヘルペス

 
などがあります。
 
この中では性器クラミジアが最も多くいのですが、厄介なことに咽頭に感染した性器クラミジアは自覚症状があまり表れません。
 

 
そのため感染の自覚が無いまま、誰かとキスをすることで感染を拡大させることがあります。
 
性器クラミジアはキスだけでも感染するリスクがあるのです。

のどに感染したクラミジアの治療と注意点 流行の原因は?

咽頭(のど)に感染したクラミジアを治療するには薬物療法が中心になります。数種類の薬を適切に使用すれば、2週間ほどで完治が見込めます。
 
自己判断で薬の服用をやめてはいけません。
 

 
病院でクラミジアの病原検査をして完全に治癒しているかを確認する必要があります。
 
クラミジアが咽頭感染しても症状はほとんど感じられず、症状が出てもノドが少し痛む、という程度です。
 
そのため市販のカゼ薬などを飲んで済ませるケースもあるようですが、もちろんこれでは治癒することはありません。
 
「どうもノドの調子がおかしい」という状態が長引く場合、クラミジアの咽頭感染も疑ってみましょう。
 
クラミジアは若者を中心に流行が拡大しており、その原因は以下のようなものが考えられます。

・オーラルセックスに抵抗がない。
 
・セックスパートナーが複数いる、あるいは不特定多数にわたる。
 
・コンドームを使用しない。
 
・コンドームではなく、ピルによって避妊を行うケースが増えてきた。
 
・クラミジアが咽頭感染してもカゼと思っている。
 

 
「クラミジアはオーラルセックスでは感染しない」と考えられていることもあるようですが、これは完全な間違いです。
 
淋菌感染や梅毒感染数は横ばい傾向ですが、クラミジアの感染者数は増加傾向にあります。
 
クラミジアを放置すると女性は不妊の原因になり、男性は前立腺炎を発症して排尿痛を起こしたり、精液に血が混じるようになります。

再発する性器ヘルペス 種類や対策

性器ヘルペスは性器、あるいは全身に潰瘍や水疱が発生する性感染症です。
 
1型と2型の二種類があり、1型は全身、特に顔・唇周辺に発症することから「唇ヘルペス」とも呼ばれています。
 
2型は性器を中心にして下半身に発症することから「性器ヘルペス」と呼ばれています。
 
2型は特に再発しやすく、一般的に年に2~3回、多い場合は5回以上再発する人も13%もいます。
 

 
性器ヘルペスに感染した場合完治するまで性行為をやめるか、コンドームを使用しないと感染はどんどん拡大してしまいます。
 
治療には特効薬として知られているパルトレックスなどを使用します。

毛じらみを駆除するには

日本での毛じらみは減少していましたが、海外との交流が盛んになった現在、また増加傾向にあります。
 
海外に出かけた男性が毛じらみを付着させて持ち込むケースがほとんどです。
 

 
毛ジラミを駆除するには、寄生している部分の毛を全て剃ってしまう必要があります。
 
毛ジラミは陰毛や頭髪だけでなく、ヒゲや眉毛、まつげ、わき毛にも寄生します。
 
眉毛やまつ毛を剃ってしまうわけにはいかないので薬剤や毛ジラミ駆除シャンプーを使用します。
 
薬剤やシャンプーは一度使っただけでは毛ジラミの卵を駆除できない場合があるので、卵が孵化するのを見計らって数回使用する必要があります。

膣トリコモナス症とは

性感染症のひとつである膣トリコモナス症は、トリコモナス原虫という小さな虫(目には見えません)によって引き起こされます。
 
原虫と接触すれば誰でも感染する可能性があるため、便器や浴槽、タオルなどから間接的な感染も考えられます。
 
つまり、女性だけでなく男性、幼児、高齢者など誰にでも感染する可能性があるのです。
 
女性が感染すると陰部や膣部分の強いかゆみや痛み、あるいは悪臭の強いおりものといった症状が出ます。
 
そのまま放置していると卵管に炎症が起こり、不妊症や早産などの原因になります。
 

 
男性は症状が出ないことも多いのですが、尿道からうみが出たり、排尿痛を起こすことがあります。
 
放置していると尿道炎や前立腺炎を引き起こすとされています。
 
治療は薬物療法が中心で、メトロニダゾールという薬を用います。
 
メトロニダゾールは非常に有効で、二週間ほどの服用で完治させることができます。

B型肝炎の感染ルート アナルセックスなど

一般的にB型肝炎は、B型肝炎ウイルスに感染した血液が別の人の血液内に入ることで感染します。
 
ただし、体液でも感染するため、性交渉でも感染するのです。
 
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど自覚症状が現れにくいため、病気になっても症状が進行してから発見されるケースが多いのです。
 

 
慢性のB型肝炎、肝臓がん、肝硬変はB型肝炎ウイルスが発症の起因になっているとも言われています。
 
B型肝炎の感染原因としては次のようなものがあります。

・不特定多数の相手との性交渉
・注射器、歯ブラシ、カミソリの共用
・入れ墨・ピアス
・アナルセックス

 
特にアナルセックスは出血するケースが多く、粘膜も弱いのでB型肝炎の格好の感染ルートであると言われています。
 
B型肝炎のみならず、アナルセックスは病気の危険性が高いことを理解しておくべきです。
 
まず、直腸炎のリスクが高くなります。
 
直腸の粘膜に炎症が起こり、排便時に痛みを感じるようになったり、出血したりします。
 
直腸炎の治療の際には、医師からアナルセックスの有無を聞かれることがあります。
 
肛門内の粘膜は非常に柔らかく、また膨大な量の細菌が存在します。
 
つまり傷がつきやすく、かつその傷から感染しやすい条件が揃っているため、A型・B型肝炎ウイルス、アメーバ赤痢などの感染リスクが高いのです。
 

 
性行為の多様性自体は当事者が納得していれば問題無いのですが、リスクは極力排除されるべきです。
 
アナルセックスのみならず、性具を使用する場合も安全性に留意しましょう。

アメーバ赤痢の症状など 同性愛者間で流行中

07年はアメーバ赤痢が男性同性愛者の間で流行しています。
 
アメーバ赤痢は80年代から感染者が徐々に増え、90年代には年間の感染者が100人を突破しました。
 
06年は747例が報告されています。
 
アメーバ赤痢は、大腸に寄生する赤痢アメーバによって発症します。
 
赤痢菌による赤痢とは別の病気なのですが、腹痛や下痢といった症状が赤痢に似ているのでアメーバ赤痢の名がつけられています。
 

 
以前は東南アジアなどに旅行した人が、現地の水や食べ物から感染する病気でした。
 
しかし最近では風俗関係者や男性同性愛者間での感染が増えています。
 
肛門性交などを行うことによって感染するのです。
 
このようなケースでは性感染症に分類されます。
 
患者の約90%は30~60代の男性が占めており、アメーバ赤痢患者の多くはHIV、B型肝炎などを併発しています。
 
03年から06年の間には死亡例が10件確認されています。
 
アメーバ赤痢は異性間での感染も広がっており、早急な対策が必要です。